2009年7月19日5時40分
国内の陸地で見られるのは46年ぶりとなる皆既日食が22日に迫るなか、皆既帯にある鹿児島県の十島村(としまむら)が頭を痛めている。人の殺到を避けるため、事前に制限したツアー客しか受け入れないよう準備してきたのに、自前のヨットなどで島にこっそり入る人たちが相次いでいるからだ。
「やっぱり、いたか」と村の担当者は嘆く。18日朝からツアー客の第1弾を乗せたフェリーの接岸が口之島(くちのしま)から始まった。だが一方でツアー客以外の上陸者は、この日までに5島で27人が確認された。
漁業と畜産の村で、人口は600人余。「村がパンクしてしまう」と当初、皆既日食を「天災」とも表現。ツアー外の人たちの上陸を防ぐための条例制定まで検討した。
大手旅行会社に委託したツアー客1500人に限って受け入れることにし、1126人が申し込んだ。島民の3倍以上の220人を受け入れる悪石島(あくせきじま)は水資源が乏しく、水源の50トンの貯水タンクを80トンに増量した。島内に1軒しかない商店は生鮮品を扱っておらず、食料を運んでこなければならない。
ほかにも、テントに泊まるツアー客のための仮設シャワーや簡易トイレの設置、臨時電源の配備……。ツアー料金は鹿児島港発着の船中2泊、テント2泊のコースでも34万円台と高額だが、こうした出費が含まれているからだ。
島への唯一の公共交通手段は、鹿児島港から10時間ほどかけて週2回就航する村営フェリーしかないため、ツアー客や村民以外はすでに乗船できないようにしている。ただ、海からの入島を常に見回るまではできない。
ツアー外で入り込んだ人たちは、自前の船で水や缶詰を持参してテントなどに泊まり込んでいるという。村職員は「インフラ整備費込みの料金を払っているツアー客との公平さが保てない」と島を出るよう説得している。応じる人もいるが、「どうして出て行かなければならないのか」と拒む人もいるという。