Undefined Database Configuration B地区ex|ギガ男爵のお買い物 - Nikon 7x50 IF SP WP


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双眼鏡 - Nikon 7x50 IF SP WP

定価ほぼ10万円。通称SP。ニコンが誇る手持ち双眼鏡の頂点。1982年発売(2007年4月にⅡ型となった)。

Nikon 7x50 IF SP WP

ひとえに双眼鏡といってもオペラグラスから架台付きの大型タイプまで実に多岐に渡るのだが、おそらくこのスタイルを想像する人がほとんどだろう。中でもこいつはフジノンFMTとともに定番双眼鏡として永く愛されている。ちなみにSPはSpaceの略、つまり天体観測向き(海外ではAstroの名を冠す)。王道のポロプリズム7倍5センチで発売から実に30年も経つが、中心から周辺まで乱れのないシャープな結像には定評があり、通常光学系ながら未だに最高クラスの性能を維持しているあたり、つくづくニコンは光学メーカーなのだな、と思う。おいそれと買える金額ではないがそれだけの価値はあるし、一生モノになる。

なおSPには10x70のモデルもあるが、7x50ですら手持ち限界ギリギリの1.5kg。2kgオーバーの10x70はいくらなんでも大き過ぎ&重過ぎ。さすがは船舶用業務機材である。

ニコン

防水ということもあって焦点調整は独立式(IF)。バードウォッチングには両目同時合わせのCFのほうが有利だが、SPはピントの合う範囲が広めで、さらに星見や海上監視では事実上無限遠固定で焦点調整の頻度が少ないためIFそのものを不便に感じることは少ないと思われる。ただアイカップが角型なので遮光性に優れる反面、焦点調整のたびにアイカップもずらさないといけないため、そっちのほうが面倒だろう(いちおう通常の平型に交換することもできる)。良くも悪くもプロ用として妥協のない製品なので、初心者が買うとこいつの素晴らしさを知る前に取り回しや重さで挫折するかもしれない。

ここで双眼鏡の基礎知識など

双眼鏡は大きく分けてポロプリズムダハプリズムに分けられる。プリズムは倒立像を正立させる双眼鏡必須の機構で、台形の直行式プリズムを2つ使い上下と左右それぞれ2回の反転を行うのがポロ、三角形の屋根型プリズムを2つ使い上下と左右を同時に反転させるものがダハ。まあ図を見てもらったほうがわかりやすいだろう。

カメラもレンズを通った光そのままの状態では倒立像となっている(フィルム一眼レフでシャッターを開放し、フィルム側から直接レンズを覗いてみると倒立像となっているのがわかる)。

ダハは対物レンズと接眼レンズ(アイピース)が一直線となるのでコンパクトにできるのが何よりのメリットだが、仕組みが複雑なぶん高い精度が求められ、全反射とならない面が存在するので入射光の損失も生じる。また対物レンズを目幅以上の口径とするにはさらに構造が複雑になる。そのため同じ性能ならポロのほうが安上がりで、光軸が並行移動するおかげで大口径化しやすく立体感にも貢献する。またポロであってもプリズムの配置を入れ替えることでコンパクトにすることは可能で(逆ポロ)小口径の製品で数多く採用されている。なおプリズムを用いないガリレオ式の双眼鏡もあるが、大口径や高倍率に向かないので採用は低倍率のオペラグラスなどに限られる。

安物やわけのわからんメーカーのダハはプリズムの反射角度や左右の光軸の精度に不安があるので、ポロを選んでおくのが無難だよ。

参考:日の出光学|双眼鏡の型式

ニコンの双眼鏡も時流なのかどんどんダハに移行していて、ポロのよさそうなのを探すとプロ向けくらいしか残ってない。もっとも10x42 EDGのような激!高性能なのも出てるからダハってだけでスルーすべきではないのだが、「その値段なら同じテク突っ込んだポロ作れよ」って思ってしまう(つまりEDレンズやら高反射誘電体多層膜やら位相差補正コートしないと三十年前のポロを追い越せないのかと)。んまあEDGもツアイスやスワロフスキーよりは安いんだけど。

まあポロは枯れ尽くして製品としての大幅な伸びしろがないから、他メーカーとの差別化や買い替え促進のためには新製品や新技術投入をダハに集中せざるを得ない、ってのが本質的な理由なのだろう。

ちなみに双眼鏡の倍率は、たとえば5倍であれば「50m離れたものを10mの位置で見たのと同じきさ」になる。「双眼鏡の倍率をカメラのレンズに換算するとどれくらいになるのか」を画角で表すのは難しいものの、おおむねフルサイズ50mmのn倍なので7倍だと350~400mmくらいの感覚(見え方としては焦点距離=倍率×50÷カメラのファインダー倍率)。そう考えれば高倍率の双眼鏡を手持ちで使い続けるのはしんどいのがわかりやすいのではないかな。初心者にとって倍率はわかりやすい数字だけど、あまり双眼鏡選びの目安にはしないほうがいい。10倍超える高倍率は手振れ補正があればずいぶん視野が安定するようだが、どれもこれもバカ高い。

それとカメラでいう画角に相当する実視野も重要なポイント。同じ7x50でもけっこう差があって、安物は視野が狭い、ってなんか頭の悪そうな人っぽいよね!

まさに木を見て森を見ないといいますか。視野が狭いと対象を捉え続けるのが困難だったりするので要チェック。

実視界のほかにJIS規格で体感的な視野を表す見かけ視界という指標もあり60度以上が広視界と呼ばれるけど※、高倍率ほど有利なのでたいして参考にならないから忘れていい。

※見かけ視界の値は上の図の視野角とは別(実視界×倍率)なので間違えないよーに。

そんなわけで、双眼鏡選びは

  • 実際に5分くらい覗いて判断する
  • 可能な限り複数製品を見比べる
  • 20倍超えるような高倍率ズームIRコート(ルビーコート)は避ける

この3つを肝に銘じるよーに。特に派手にコーティングを謳う製品はロクなのがない(高級機にとってはあたりまえの処置だからな)。

参考:Nikon Sport Optics|双眼鏡の基礎知識

SPのさらに上の世界もあるようだが、この先はもうピクセル等倍検証に似ていて、対象を観測するより性能チェックに満足を見出す人の領域と思う。

2013-09-25

先日、古き友人と三宅島に行ってきた。その際に「オレの宝物だー」とSP見せびらかしてくれたんだけど、なるほどこりゃすげえ。以前彼にもらったミザールの7x50がまるでおもちゃだ。

何しろ視野の広さの印象がまるで違う。そして明るい。カタログの数字だけならほとんど変わらないと思ってたけど圧倒された。双眼鏡で視野が1度違うとどえらい差になるの痛感したわ(これで狭いっていう人たちはもうよくわからん)。アイレリーフも同じくらいなのに、ミザールは目をアイカップにピッタリつけるとかえって視野がケラレまくってまともに左右の軸あわせができないくらいアイポイントがシビア。対してSPは瞬時に視野が安定する。周辺の解像も抜群で流れるようなことは一切ないし収差も皆無、これほんとに三十年前の設計なのか?値段のわりに優秀なんだろなー、と思ってたミザールが実はフリンジだらけで周辺像がけっこういい加減だったことを気づかされた。んま、SPと比べて重さは半分、値段は1/20だからミザールに価値がないってわけじゃないんだけど(そもそももらいものだし)。

もー、ダメじゃないかオレにこんなの見せたら。さすがに「SP買う!」とは言い出さんが、「トロピカルならがんばれば・・・」などと心が揺れてる(こっちは実売5万切るし)。SPかトロピカルかは長年双眼鏡マニアの間で議論が絶えないお題のひとつなのだが、結論からいってしまえば手持ちならトロピカルで十分、ということらしい。あとは自分で赤いラインでも書けば完璧。ちなみに外寸はまったく同じだがトロピカルのほうが150g軽く、若干視界が広いようだ。

2016-04-02

SP やトロピカルは確かに一生モノなんだけど、一生モノだけにおいそれと買える値段じゃないので、お手頃値段でいいものないかと探してたらエスパシオを忘れてた。8~10倍の中型ダハで今となってはとっくにディスコンだけど、中古で 1万円以下で転がってるし大きさも普通のひとの持ち運びでなんとか苦にならないサイズなのでおすすめ。なかなか出てこないのが難点。

脚注

無駄に詳しくなってしまった。

ひとみ径と明るさ
双眼鏡をちょっと離れて覗き込んだときに見える光円をひとみと呼ぶ。この直径がひとみ径で大きいほど視界が明るい。ひとみ径は対物レンズの有効径÷倍率で得られる(7倍5センチなら7.1mm)。
人間の目の瞳孔よりもひとみ径が小さいと暗く感じる。逆にどんなに大きなひとみ径であっても瞳孔以上の集光はできない(7x50や10x70以上の口径の製品がないのも開いた状態の瞳孔が約7mmのためである)。つまり明るいところで瞳孔が閉じている場合、ひとみ径の小さい双眼鏡と大きな双眼鏡で明るさの差は生じない
昼間しか使わないなら3~4mm程度でも十分だが夜間監視(何をw)なら最低でも5mmは欲しい。天体観測も光害の強い街中では7mmより4~5mm前後のほうが適している。これらのことから、7x35や8x42あたりがいちばん潰しが利くといえる。
ひとみ径の自乗は明るさの目安とされるが、これは入射光の透過率が100%の理論値のようなものなので実際の明るさはレンズの硝材や枚数、コーティングによって変わってくる。またデキの悪い双眼鏡はひとみがきれいな円形にならず四角っぽく見えたりする(カメラでいうイメージサークルが撮像範囲より狭い状態に相当)。
アイレリーフとアイポイント
一眼レフなどでは眼鏡をかけたままファインダーを覗ける機種はハイアイポイントとされているが、双眼鏡においてひとみのケラレが起こらない限界距離を示す用語はアイレリーフが一般的。アイポイントはひとみがケラレることなく見える範囲で、アイレリーフだけでなく覗き込む角度も影響する。視野の広さや明るさはある程度推測できてもアイポイントの寛容さはカタログスペックでは判断できないので、実際に覗いて確認すべき重要なポイントのひとつ。
プリズム材
双眼鏡のプリズムに使われる硝材はソーダガラスを改良したアッベ数50以上のクラウンガラスが一般的だが、その中でも屈折率の高いBK7(F線1.5219)、BaK4(同1.57587)、SK15(同1.63045)が双眼鏡に用いられる代表的な硝材で、後者にいくに従って高屈折率で値段も高い(屈折率は空気中が1.0で水中は1.338となるが波長によって異なり、F線は波長486.13nmの青色光になる)。安かろう悪かろうの判断としてBaK4を使っているかどうかがひとつの目安になる。ちなみに鉛ガラスを改良したアッベ数50以下のガラスはフリントガラスと呼ばれる。
アッベ数は波長つまり色による屈折率の差を逆分散率で示し、数値が高いほど低分散=色収差が少ない=補正が少なく済む。ただしポロプリズムの双眼鏡では入射と出射の角度が90度となるよう設計されており、この場合色の分散は生じない(ただし色収差が発生しないのはプリズムにおいてであり、対物レンズはこの限りではない)。つまり高屈折率の硝材を用いるリスクは純粋にコストアップだけである。
なお硝材の屈折率とアッベ数はおおむね反比例の傾向にある。たとえばEDレンズに用いられるFK03はアッベ数は76と高いが屈折率は低い(F線1.44195)。異常低分散硝材のCaF2(蛍石、フローライト)に至っては脅威のアッベ数95だがF線の屈折率は1.43704。
カメラなどの光学機器のレンズ硝材としては「屈折率が高く低分散で比重が軽い」のが理想だが(さらに透過率も当然高いほうがよい)、そんなものは存在しないので用途とコストに応じて複数の硝材を組み合わせたり反射を減らすためのコーティングを施したり非球面に加工したりと、光学メーカーは工夫をこらしている。
参考:シグマ光機|光学素子ガイダンス:ガラス材料
通常光学系
望遠鏡の世界では三波長(赤のC線:656.27nm、青のF線:486.13nm、紫のg線:435.83nm)で色収差、コマ収差、球面収差が補正されたレンズをアポクロマートと呼び、EDレンズや非球面レンズなどアッベ数が高くかつ異常部分分散性を持つ硝材がその補正に用いられる。これらの硝材を用いないものは通常光学系と呼ばれる。
フラウンホーファー線
光の線スペクトル。プリズムを通過した太陽光は屈折率の違いにより波長ごとに虹のように分かれるが、その中にいくつもの暗線が存在する。これはそれぞれ特定の波長だけを吸収する元素によって生じたもので、19世紀のドイツの物理学者ヨゼフ・フォン・フラウンホーファーによって代表的な暗線にアルファベットが付けられた(大文字・小文字は区別されることに注意)。ひとつの元素で生じる吸収線はひとつとは限らず、三波長のC線とF線は水素、g線はカルシウムの吸収線である。

軸上色収差によるパープルフリンジはピントのズレにより緑のD線やE線から最も遠い赤と紫(青)が合わさり紫の滲みとなって現れたもの。

フラウンホッファー線を調べることで太陽活動の詳細な分析が可能となったり、ドップラー効果による線の位置のズレ(赤方偏移)から遠距離天体との相対速度を知ることもできるようになった。
ちなみに欧州最大の研究機関、フラウンホーファー研究所は彼の功績を称え命名されたもの。