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OVA - 装甲騎兵ボトムズ 幻影篇
BD各巻 4,800円。TVシリーズから 30年くらい経った、むせる野郎どものお話。
神の後継者に指名されながら神殺しの業を背負った男は 30年経ってもくそまじめな生き方を変えられないようだ。それでも自分の手で神を作るのは許せちゃうくらいには丸くなったらしい。
「インフィニティ」のクライマックス、ゴモルの塔でエルドスピーネ最後の一機の動きを先読みしたシーンにはしびれたね。これまでのキリコの闘い方とは明らかに異なる。永きに渡り抗い続けてきた生まれながらの PS、異能生存体、触れ得ざる者、異能者という己の特異性を肯定し、顕在意識のもとで自らの能力を引き出せるに至った・・・つまり無自覚の神がついに目覚めたわけだ。
もしワイズマンとの初対決の頃から己の特異性を受け入れていたのなら、テイタニアとの対決であれほど苦戦はしなかったのではないかと(あそこまで必死なキリコは後にも先にもないと映る)。
それとキリコと行動を共にし神の裁定で地底に落とされながら生き延びただけでもたいしたものだが、曲がりなりにもマーティアルの秩序の盾として命を受けたネクスタント 3機の猛攻を凌ぎ切ったシャッコもまた、異能生存体の資格は十分だろう(ペールゼンに言わせれば重要なのは生き延びたという結果だからな)。どうする存在確率 125億分の1に下がったぞ!じゃなくて、そのシャッコすらゴモルの塔でリジェクトされたのは異能生存体であることは神を構成する資質のひとつにすぎない、ということか。
そんなわけで、ほぼ完成形に達したリアルロボットによるオカルト SF ロマンス、その両極端のケミストリーこそボトムズの魅力。凡人のオレは成り行きに任せて生きるのさ。
次回「子煩悩」。己に潜みし鬼子母神が姿を現す。
バニラ一党が各地を巡る際、ウドの街で苦いコーヒーを飲むシーンは欲しかった。
「ペールゼン・ファイルズ」に引き続き 3DCG を用いている。AT の動きのぎこちなさは否めないが、それでも不評だった前作ほどではない(ストーリ-は「野望のルーツ」並みによかったんだけどねえ)。TV シリーズのサウンドを担当した乾裕樹がすでに他界しているのが惜しまれる。彼の BGM なくしてむせるウドやクメンの密林、クエントのオカルトショーの臨場感はあり得なかった。が、後任の前嶋康明もなかなかがんばってると思う。
・・・あらかじめ決められた運命というか結末というか、ボトムズにおけるキリコないし異能生存体は、ガンダムにおけるヒゲの黒歴史とどこか通じるものがある命題に思う。
2020年 9月追記:
ほんとに神の子篇が始まっちゃったよ。
バニラの子供じゃないのかと。
脚注
- 生まれながらのPS
- キリコ。炎の臭いが染み付いたパーフェクトソルジャー。ガンダムでいうところのニュータイプのようなもの。ヂヂリウム不要で経済的。
- 異能生存体
- キリコ。存在確率 250億分の1なので長い目で見ればけっこういる。近似値ならさらにいる。
- 触れ得ざる者
- キリコ。触れると権威が地に陥ちたり、半生を掛けて育成した精鋭部隊を全滅させられたり、ありえない作戦で 1億2000万の兵士を失ったり、惑星が爆発したり、むせる。
- 異能者
- キリコ。先代はワイズマン。不能者。
- キリコ・キュービィ
- 奴を語る言葉は多い。巨大な不発弾。最も高価なワンマンアーミー。心臓に向かう折れた針。歴史の裂け目に打ち込まれた楔。赤い肩をした鉄の悪魔。クエントの神の子。修羅。死なない兵士。クソ真面目な男。そのすべてともいえるし、違うともいえる。
- ワイズマン
- 突然変異の元クエント人。「闘え!何を!人生を!」がモットーのぶっそうな宗教法人「マーティアル」を興して戦乱を煽ったり脅威のテクノロジーを駆使してアストラギウス銀河を影から支配するも、賢者の名に反して二度にわたってキリコの性格を読み違う愚を犯した。
- ヒトとしての実体はとうの昔に失っているが、それが結果的にひょっこり再登場する伏線となったあたりがボトムズのボトムズっぽいところ(わりと場当たり後付け設定多いから。
- ヨラン・ペールゼン
- TV本編には出てこなかったにも関わらず、半生を赤い肩の吸血部隊に捧げ、キリコにトラウマとアイデンティティを植えつけシリーズの骨子を確立し、筋金入りのキリコウオッチャーとして多くの登場人物そしてファンからも一目置かれる存在となった。手塩に掛けたレッドショルダー残党の手で殺されたのなら本望だろうか。
- ジャン・ポール・ロッチナ
- むせる次回予告の中の人。ヨラン・ペールゼンのお手伝い&後釜として神の目を授かった憤怒の人。時に情報将校の秘書としてメルキアに潜み、時に大佐としてバララントでふんぞり返り、時に南斗鳳凰拳の伝承者としていたいけな子どもにピラミッド作れと無茶難題を押し付け、時にヒトラーの尻尾として全人口の半分が死ぬレベルの戦争起こし、時に「私が伊能家であったならぁぁぁ!」と自分の血筋に絶望し
測量をやめた人が変わった。今はマーティアルに巣食う老人として狂言回しを担う。それを口実にあちこち覗き見するのが趣味。 - ヴィアチェフラフ・ダ・モンテウェルズ
- かつてギルガメス・バララント双方に多大な影響力を持っていた宗教法人マーティアルのボスにまで登りつめた男。キリコに関わったばっかりに娘をサイボーグにしたりアルツハイマーになったり。気を取り直して再び育児を試みたものの児相に断られて自殺した。
- クエント
- 惑星の名前。何かあるとすぐ星ごと爆発する。名物は脅威のテクノロジー、脅威の傭兵、脅威の穴の底。
- PS
- マシーンと一体になれる人。一足先に自由になった脅威の兵士。ガンダムでいう強化人間みたいなもの。
- 素体
- 裸体。余命2年の花嫁。というジョークを本気にしてしまったためキリコの手で惑星ジアゴノを周回する人工衛星となった脅威の兵士。キリコはフィアナと呼んでいたけど昔の女の名前だった可能性が。
- 秘密結社
- 裸体の生みの親。マーティアルの研究機関から全裸好きがスピンアウトして結成。まあモンテウェルズは衆人環視の中で娘を裸にひん剥いてるし、えらいざわざわしてたので、マーティアル自体も相当エロいのだろう。
- 緑の泡
- 神の子がピンチになると発動する、カエルの卵をつつんでるようなやつ。たぶん実写版作ったらかなりグロいと思われる。
- ヂヂリウム
- ボトムズ世界のブラックボックスのひとつ。常温超伝導を可能にする液体半導体で、パイロットを支援するコンピュータの高速処理を可能にする。美女はシャワーにして浴びる。もちろん全裸で。
- ポリマーリンゲル液
- ボトムズ世界のブラックボックスのひとつ。人工筋肉マッスルシリンダーを動かす液体で、電気信号を送ると化学反応を生じる。
- ブラックボックス
- AT の冷たいリアリティは兵器としての実現性、運用性をとことん煮詰め脅威のテクノロジーの誘惑に乗らなかった結果のたまもの。リアリティを高めるには仮想設定は少なければ少ないほどよい、というお話。
- ギガ男爵
- 奴を語る言葉は多い。生まれながらのオナニスト。不能生存体。濡れ得ざる者。そのすべてともいえるし、違うともいえる。